「おーい!テトム!昼飯にするぞ!」

父親の声が遠くから風に乗って来た。

今日は雲もなくやけに暑い日だった。

空気はとても乾燥していた。そして、青紫の空はどこまでも高かった。

テトムは、最近毎日のように父親の畑仕事を手伝わされていた。

何ヶ月か前に小学校6年になったばかりだったというのに、

通うべき学校は、だいぶ前から休校していた。

テトムの親も含め、他の生徒の親達も、

仕事を手伝わせるために子供達を仕事にかり出させていたのだ。

そのため学校を開けても生徒が集まらないのである。

テトムは時計を見た。もう既に時間は午後1時近かった。

テトムが家に戻ろうと耕作機のギアに手をかけた。と、その瞬間。

ゴォォォォと凄い轟音が頭をかすめた。

音のする方に目をやると、火の玉が凄いスピードで空から降って来ていた。

「なにっ!あれっ!とうさん!」

テトムは大声で叫びながら、少し離れた場所にいる父親の方へ走っていった。

父親は呆然と立ち尽くしている。

ドォォォン

火の玉は少し地面にバウンドして畑の端の用水路の手前で止まった。

次の瞬間、中から黒いものが飛び出した。

「生き物?」テトムには、それが何であるか判別できなかった。

しかし、火の玉の正体は旧式のフライヤーであることは、かろうじて分かった。

フライヤーの前部の整備用ハッチの隙間から青いプラズマの光が覗いている。

「おーい」黒い物体から叫ぶ声がする。どうやら宇宙人ではなさそうだ。

少し安心したテトムは少しずつ近づいていった。

「テェトゥム」西部なまりが入っていた。「まさか!」

「ピーラなの?」ピーラはテトムの遊び友達だ。

最近はあまり話をすることが出来なくて、寂しい思いをしていたのだった。

「大丈夫なの?怪我はない?どうしたの?なんでなの?」

テトムは混乱してしまっていた。

「なんてことだあ・・・ああ・・・」

ピーラは肩を落としてフライヤーを見つめていた。

「大丈夫?」テトムがまた声をかけた。

「テェトゥム大変なんだ!」突然、ピーラは我に帰って叫んだ。

「どうしたの?」「ばあちゃんが病気なんだ!死にそうなんだよお」

目からは大粒の涙が溢れていた。

「早く直さなきゃ」散らばった部品を拾い始めました。

「これは無理だよお」

テトムは、おばあさんの病気とフライヤーの修理の関係が

いまいち分からなかったが、修理がかなり難しいことは分かった。

「でも、でも、急がなきゃ」ピーラは、かなり焦っていた。

「直りそうなの?」

テトムは、一緒に部品を拾うのを手伝いながら一応聞いてみた。

「分からないよお・・・でも・・・」

父親は落ちたのが緑族のピーラと分かるとさっさと家の方へ向かっていた。

何もなかったかのように・・・

テトムはなんとかならないか考えをめぐらした。

しかし、すぐに答えは出てこなかった。

こういう場合、答えを請う相手は決まっている。

「とうさん」しかし既に父親の姿はなかった。

「ねえ、うちに来て」なんとかしてテトムはピーラを助けたかった。

最近会っていなかったとはいえ、

ピーラはテトムにとって最高の友達だったからだ。

「直るかなあ」ピーラ不安げであった。

「とうさんに聞いてみるよ!そうすれば、なんとかなるよ!絶対ね!」

テトムはピーラを不安がらせないように、わざと自信たっぷりに答えた。

ピーラは少し足を引きずっていた。「ちょっと待ってて」

テトムは耕作機へ走っていった。座席に飛び乗るとギアをバックに入れた。

後部が少し持ち上がるようにして勢いよく動き出した。

テトムは耕作機をピーラのすぐわきへ止めた。

「さあ、乗って」ピーラの脇を抱えて荷台へ連れていった。

「それじゃあいくよ」テトムはギアを入れた。