「おーーーい」おじいさんは心の中で叫びました。

「あのオヤジなら気づくはずだ。なんとか気づいてくれ」

しかし、何の反応もなかった。

機体は静かに通りの突き当たり手前に着陸した。

辺りには人影がまったくなく、静まり返っていた。

2人は降りて探すことにした。

「おーい、誰かいないのかー!」おじいさんは大声で叫んだ。

テトムは機体がバラバラになったあたりに目を凝らした。

何も残っていなかった。

「テトム、まわりを探してみよう」「うん!」

通りには質素な石造りの店が並んでいるだけで特に探すような場所は

なかった。店と店の間の狭い路地も片っ端から見ていった。

「どうしよう・・・」「ああ、あのオヤジに声が届けばなんとかなるかもしれんのに・・・」

おじいさんは時計を見た。「もう時間がないな・・・戻るか・・・」

このままだと置き去りにしているピーラが”夜”に呑まれてしまう。

「テトム!そっちにはあったかい?」

「ぜんぜんないよぉ。」

「どうするか・・・」おじいさんは頭をかかえてしまった。

時間は容赦なく過ぎていく。

「どうしたんだね。こんな夜半に」

「おお、よかった!探してたんだよ。あんたを!」

そこには長身の老人が立っていた。ただ、うさぎの耳はなかった。

「あんた、アルメリアの花の入ったずた袋を見なかったか?」

「そうか、あれはあんたの袋だったのか。あれなら薬屋が持って行ってたな」

「その薬屋はどこなんだい?」「案内しよう。」3人は歩き出した。

「あんたにまた会えるなんて、うれしいねえ」

「ああ、そうだな。でもすまないがゆっくりはしていられないんだ。」

「そうだったな。ところであの子はどうしたのかね?」

「別の場所で待たしてる。急がないと。」

太い路地を3本ほど横切ったところの角に薬屋があった。

長身の老人はドアを3回ノックした。

「はい。ただいま。」ドアが開き、小太りの男が顔を出した。

「どうしたんです?長老。こんな時間に」

「昼間、花の入った袋を拾ったろう。それは彼らのものじゃないか?」

「いえ、あれは俺が拾ったから俺のものです。」

「何を言ってやがる。早く返せ!」おじいさんは怒鳴った。

「裁判をしてもいいのか。勝ち目はないぞ」

そう言うとふところから、うさぎの耳を取り出し頭に当てた。

「す、すみません。さっき言ったことは訂正します。袋はお返しします。」

そういうと、店の奥から小さな袋を持ってきた。

「もう加工してしまいました。乾燥して粉末に・・・」

「そうか・・・あんた、これで大丈夫かね?」おじいさんの方を見た。

「手間が省けたかもしれんな。ありがとよ。」

「早く戻らないと、時間がないよ」テトムはおじいさんの袖を引いた。

「そうだな。急ごう」3人は小走りでフライヤーに向かった。

ピピピピ・・・おじいさんの時計のアラームが鳴り響いた。

「まずい!時間だ!急がねば」ピーラのところまで戻る、リミットの時刻だった。

辺りにノイズの音が広がった。

「また来てくれ。あんたならいつでも歓迎するよ。」

「ありがとう。またいつか来るとしよう」

機体は急上昇しピーラのもとへと向かった。