「少し休んでいいかな」おじいさんは息を切らしていた。

「すみません、手伝って貰っちゃって。」ピーラは小さくなった。

おじいさんは翼の下に座り込み、そのまま横になった。

5分もしない内に、いびきが聞こえてきた。

テトムは起こさないように静かに立ち上がった。

「アルメリアもう少し集めようよ」「そうだね」ピーラも賛成した。

ふとおじいさんの方に目をやると、眉間にしわをよせていた。

テトムはちょっと心配だったがそっとその場を離れた。

「大丈夫かなあ、おじいさん・・・」ピーラも心配しているようだった。

袋がいっぱいになったので2人は戻って来た。

おじいさんは額に汗をかいている。

「じいちゃん、大丈夫?」おじいさんは突然、目を見開いた。

そして、ゆっくりとまぶたを閉じた。

「今、カナルの夢を見てたよ。」おじいさんは寂し気な目をした。

カナルとはおじいさんの息子、つまりテトムの父さんの兄さんのことだ。

テトムは、父さんと母さんが前に話していた事を思い出した。

カナルは事故で死んでしまったことを。

「じいちゃん、さみしい?」

「寂しいが大丈夫だ。テトムも来てくれるしな。」

おじいさんはテトムの頭を撫で、微笑みながら、

「子供は、大人の心配なんてしなくていいんだよ」やさしく言った。

「さて、出掛けるか!荷物は座席の前に置くぞ」

そう言うと、花の入った袋を持ち上げた。

荷物を納めると、おじいさんはコントロール・パネルのスイッチを

左から順番に入れていった。

フライヤーの自己診断システムが起動し、”OK”サインが出た。

メニューから”離陸”を選択。おじいさんは得意げに操作していた。

プロペラが回り始めた。機体は勝手に向きを変えながら動き出した。

前方は野原だがモニターにはコースが写し出されていた。

少しづつスピードを上がっていった。ガタガタと振動が激しくなっていった。

急に振動がなくなった。一気に高度が上がっていく。

ピーラは振り返った。遥か後方の地平線には一直線に黒いラインが見える。

ラインの上部は青紫ににじんでいた。