「おじいさん、あとどのくらいで着きますか?」

ピーラが心配そうな顔をしている。

「そうだなあ、ここからだと1時間も掛からないね」

「そうですか・・・」ピーラはもう一度後ろを振り返った。

「今日はシェルターを持ってないんです。」ピーラは涙ぐんでいた。

「なんだって!」おじいさんは驚いた。

緑族はそのままの状態で夜を迎えると死んでしまう。

だから、出掛けるときも簡易式シェルターを持ち歩くのだ。

「そうか、あの事故で壊れたんだね・・・」

テトムはピーラが何も持っていなかったのを思い出した。

「分かった大急ぎで行くよ!」

おじいさんはそう言うと、パワーを全開にした。

ドドーン

突然、後ろのエンジン部から炎と真っ黒い煙が吹き出た。

「なんてことだ!」おじいさんは大声で叫んだ。

「ピーラくんすまない」

すぐにプロペラは止まってしまった。

自動的にフラップが滑り出した。

フライヤーは今やただのグライダーと化している。

おじいさんは注意深く、前方に着陸出来る場所がないか探した。

長い森を抜けると眼下には石造りの都市が視界いっぱいに広がった。

「まずいな」おじいさんはレバーを左に倒した。

機体は大きく弧を描きながら滑空してゆく。

ガン

機体に衝撃が走った。なんと右の翼に金属の棒が突き刺さっている。

「なんだ!なんでだ!」3人ともパニック状態に陥った。

ガコン

こんどは胴体の左前方に突き刺さった。

「くそー」おじいさんはそれでも機体を立て直そうと必死だった。

どうやら、このままでは町の外へは抜けられそうになかった。

「よし!」おじいさんは着陸出来そうな太い道路を探し当てた。

モニターの自己診断のメニューを選んだ。

数秒で答えが写し出された。

”垂直尾翼不能・エンジン不能・GPS不能・・・”

機能している箇所の方がほんのわずかだった。

機体は道路の上に滑り出た。

エア・ブレーキを全開にした。タイヤは出なかった。

減速はほとんどしていないまま滑空していった。

道路上では人が逃げ回っているのが見える。

「伏せろおおおー!」おじいさんは叫んだ。

ガガーン

凄まじい衝撃が襲った。

どんどん滑っていく。

色鮮やかな飾りや花が後方へ飛び散っていった。

前方に屋台が並んでいる。そこを目指して機体は滑り込んでいった。

ガシャーン

機体は屋台数台を破壊してようやく止まったのだった。