「だ、大丈夫かあ?」

おじいさんは胸を押さえながら苦しそうに聞いた。

「うぅ・・」ピーラはなんとか無事であった。しかし、

テトムの方はピクリとも動かなかった。

「おい!テェテゥムしっかりしろ!」ピーラはテトムの体を揺すった。

おじいさんは後部座席へ体を乗り出し、テトムに手を延ばした。

テトムはすでに息をしてはいなかった。

「早くテトムを降ろすんだ!」「は、はい」

おじいさんの動きはとても機敏だった。

テトムを抱きかかえると機体から飛び下りた。着地と同時に後ろを振り返ると、

ピーラが左手だけを使って不器用に降りようとしている。

よく見ると右手がだらりと垂れていた。

「大丈夫か?」

あわててテトムを地面に寝かせると、ピーラを抱きかかえて降ろした。

少し離れるとおじいさんはテトムに人工呼吸を施した。

少しして心臓も止まっていることに気付いた。「ま、まずい」

全身から汗が滝のように吹き出た。ピーラはオロオロするばかりだった。

おじいさんは心臓マッサージも合わせてやった。

「動けー!」しかし心臓は動き出しそうになかった。

「ああ、なんてことだあ」叫びながらもマッサージを続けていた。

『大丈夫だ』

「なんだ!?」おじいさんの頭の中で声がした。

辺りを見回すと10メートル程離れたところに、

褐色の肌をした長身の老人が立っていた。

でも、なぜ頭の中で声がしたのか理解出来なかった。

『心配ない』

また、頭の中で声がした。「うわっ」おじいさんは動転した。

声がするのも不思議だが、”心配ない”根拠も分からなかった。

『テトムくんはまだ生きている。意識が体から離れているだけだ。

  だから、ピーラくんを診てあげなさい』

「なぜそんなこと分かるんだ!」

おじいさんは今にも飛び掛かりそうな様子だった。

『それはテトムくんに聞いたからだ』

「そんなこと出来っこないだろう!

  テトムがこんな状態で、どうやって聞くのか教えて欲しいもんだ!」

『我々には心を読む道具があるのだ』

そう言うと、頭の方を指差した。

よく見ると頭からウサギのような2本の白い耳のようなものが出ていた。