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父親はため息をついた。所詮、子供には分からないことなのだろうか。
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自分の若い頃は今とは違った。みんなの顔には笑顔があふれ、
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現在のように、口を開けば悲観的な話が出てくるということもなかった。
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もし、誰かが今年の出来はイマイチと言ってたりしたとしても、
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そう言った人の畑に限って、他の畑より収穫が多かった。
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だから、学校をよくさぼって街へ遊びに行ったりした。
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もちろん、畑さえ持っていれば、将来は安心だと信じていた。
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だから、父親が30年かけて開墾し広げた土地を素直に受け継いだのだ。
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でも、今考えると学校に行っておけばよかったと思う。
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だからこそ、テトムには学校をちゃんと卒業して欲しいと願っていた。
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成績なんてどうでもいい。せめて読み書きが出来さえすれば・・・
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畑は穀物メジャーのプラントの企業に売ることにした。
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とりあえず3年は暮らしていけるだけの金は手に入った。
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声がする方に目をやると、じっとこちらを見つめているテトムが立っていた。
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「な、なんでそんな所につっ立ってるんだ。早く仕事を始めろ!」
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父親はドキッとした。でも、それを隠すために、わざと怒鳴った。
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妙に存在感が薄い声だった。でもその分、目が強く訴えかけていた。
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そう言うなりテトムの体はみるみるうちに消えていった。
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