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『テトムくんは瞬時に離れた別の場所に移動した。でも、また戻って来る』
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「別の場所って?いったいどこなんだ。まさか、天国じゃあるまいな」
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おじいさんには老人の言葉がたわごとにしか聞こえていなかった。
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まったく信用出来なかった。大体、機体に突き刺さった金属の棒は、
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おじいさんの目は殺気に満ちていた。「答えてもらおう!」
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壁のむこうで子供が泣き出すのが聞こえた。何箇所も同時にだった。
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老人は慌てて、遠巻きにこちらを見ていた親達に合図を送った。
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親達は子供達のウサギのような形の機械をみんなはずしていった。
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『恐怖が増幅されてしまうからだ。親と子供自身の恐怖が共振してしまう』
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「そんなことはどうでもいい!なんで攻撃したか説明してもらおうか!」
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腕の向きを変えれば少しは痛みが和らぐかもしれないと、少し動かしてみた。
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テトムに鼓動はなかった。位置を間違えたかと思いもう一度確認した。
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自分さえテトムを誘わなければこんなことにはならなかった。
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『すまないことをした。たしかに攻撃はこの街の若者がやったことだ』
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『今日は祭の日だ。天空の神に感謝し、また来年を占う日でもある』
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ところが、君のフライヤーが真っ黒の煙で空にかげりを作ってしまった。
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それを見た若者達が怒りのために攻撃してしまったのだ』
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「それはたまたまだろう!わざとやったわけじゃない!」
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価値観が違うのだ。理解しにくいとは思うがそれが事実だ』
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フライヤーは破壊されたわけだし、テトムはいまだに意識が戻らない。
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もしかしたら、このままテトムの意識は戻らないかもしれない。
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「夜になったらこの子は死んでしまうんだ!それまでに直せるのか!
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どういうことなんだ?」おじいさんはヒステリックに怒鳴った。
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老人はそう言うと見るからに頭が良さそうな人を何人か呼び寄せた。
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女性も2人混ざっていた。全部で6人、老人も入れると7人になった。
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みんなそれぞれにウサギ型の機械からコードを延ばし、
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隣の人の機械とつなげた。横に7人並んで目を閉じた。
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「ち、近寄るな!」あまりの異様な光景におじいさんは圧倒されていた。
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女性は無表情で表面から内側まで、くまなく観察しているようだった。
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しばらくすると、分解し始めた。近くにいた男が道具を渡している。
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「や、やめろ。なにをする」おじいさんの声は悲鳴に近かった。
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すっかりバラバラになると、今度は大勢の人達が集まって来た。
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「うわっ、なんだ」おじいさんは面喰らって拳銃を振り回したが
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人々はおじいさんの脇をすり抜け、部品の山へと向かった。
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いつの間にか老人を含めた7人のところが12人に増えていた。
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その内部で何が起こっているのかは全く見えなかった。
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どのくらい経ったろう。でもそんなに長い時間ではなかった。
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隙間からはメタリックな光沢のある表面がキラキラ輝いているのが見えた。
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「おぉ」おじいさんからは、それ以上の言葉は出てこなかった。
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『修理は終わった。形が変わったことは許して欲しい。
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「あ、ああ、別にいいんだ」おじいさんは目を丸くしていた。
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「これプラズマ式に変わってる・・・」ピーラが言った。
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『その通りだ。操縦の仕方はオリジナルに近くしてあるので問題ないと思う』
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高い周波数のノイズが辺りを包んでいた。次第に音は大きくなっていった。
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おじいさんとピーラはテトムの様子をうかがったが、何の変化もなかった。
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次の瞬間、テトムの顔に血の気が戻った。「うーん・・」
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おじいさんはテトムを抱き締め頬ずりし、涙を浮かべた。
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「そうだ!ピーラくん、すまなかった。痛かったろう」
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